てるみくらぶ破産で内定者50人はどうなるのか考えてみる

2017年3月29日水曜日

内定取り消し

t f B! P L

問題発覚からあっという間の破産劇

旅行会社の「てるみくらぶ」が破産手続を開始したそうです。負債総額は約151億円。リーマンショック後の旅行会社の破産としては最大規模だとか。そして多くの旅行者および申込者に多大な迷惑をかけています。この辺りの経緯については報道で大きく取り上げられていますからこの記事では割愛します。問題は3月末のこの時期になって「てるみくらぶ」に新卒内定していた人たちがおよそ50人もいて、宙ぶらりんの状態になっているということです。

従業員80人の会社が新卒を50人も採用?

今の時代新卒で50人も採用するというのはかなりのものだと思います。まぁすぐに辞めることを見越して多めに採用する企業もあるでしょうけど。それにしてもです。従業員80人の会社が50人もの内定を出すものでしょうか?いきなり従業員数が1.5倍以上になるんですよ。いったいどういう見通しだったのでしょうか。こういったところにも経営の誤りが見て取れます。

引っ越し費用を返せ!

可哀想なのは3月のこの時期に内定を取り消された人たちです。報道によると27日に本社近くで内定者たちに説明会があったようで正式に内定取り消しを通告されたようです。地方から出てくる人は当然住居を見つけているでしょう。転居に伴う引っ越し費用や敷金礼金、解約すれば違約金。家具家電を揃えてた可能性もあります。これらの費用はだれが負担するのでしょうか?

1年を棒に振ってしまう可能性

もっと深刻なのはこれから先の生活です。せっかく新卒として社会人生活を始める予定だったのにそれが突然なくなる。いわば‟無職”の状態になってしまうのです。そして再び就職活動を始めなければなりません。この精神的負担は相当だと思います。前途ある若者がこんなことで働くことに対して嫌なイメージを持ってしまう…社会にとっても損失ではないでしょうか。

そもそも内定取り消しとは

そもそも内定取り消しとはどのようなものでしょうか。
内定とは「この仕事がしたい!」「この会社で働きたい!」と申し込んできた人に対して会社が「あなたを採用します。○月○日から来てください。」と応じることです。そして注意が必要なのは、内定はいつでもキャンセル可能な‟ただの予約”ではないということです。内定を出した時点で実は雇用契約は成立しているのです。
内定から実際に働き出す前までに不測の事態が起きた場合は取り消すことが可能な条件付きの雇用契約を結んでいるものと理解する必要があります。

内的取り消しの合理的な理由とは

ではどのような事態が起きた時に採用内定を取り消すことができるのでしょうか。
それは「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められるもの」です。
例えば、内定者が大学を卒業できなくなったとか、申込の経歴にそれを知っていれば採用しなかったと言えるほどの虚偽が見つかった場合などです。また突発的な災害により事業活動の継続が難しくなった場合などもこれに該当すると言えるでしょう。

内定取り消しの法律的な性格

雇用契約が成立している以上、会社が内定を取り消すのは雇用契約の一方的な解除つまり解雇ということになります。解雇であれば労基法的には30日前に予告をするか30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。新卒であれば4月1日から採用でしょうから3月27日の説明会で取り消しを通告したのであれば解雇予告手当の支払いが必要です。また内定者は急な取り消しによる損害賠償を請求することができます。上述のように入社のために上京して住むところを確保した人などはその費用であったり、次の就職先を見つけるまでの生活保障だったりですね。

現実的に考えられるのは…泣き寝入り

しかしながら破産開始の手続きに入った会社からどれだけの補償を受けられるでしょうね。実際旅行の申し込みを行った利用者への弁済もわずか1%程度しかできないというではないですか。となると損害賠償はもとより解雇予告手当すらまともに払ってもらえるかどうか…泣き寝入りになる可能性が高いですね。しかもこれから就職活動を再開しなければなりません。内定取り消しをされた人たちのことを考えるとやるせない気持ちです。
国がどこまで支援できるかも不明です。今回大きく取り上げられたので注目を浴びていますが「てるみくらぶ」のような例は他にもあるわけで「てるみくらぶ」内定者だけ特別の対応をするというのも難しいでしょう。

まとめ

今回は「てるみくらぶ」を例に内定の時点で(条件付きながら)雇用契約は成立している、ということを見ていきました。内定を出す側も受ける側もよ~く考える必要があるということですね(特に内定を出す企業側ですが)。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
それではまた!

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福岡の社労士です。 労務管理のスペシャリストとして活動しています。 人事評価制度の構築や就業規則作成、労働トラブルの相談や助成金が得意分野。 気になることがあればお気軽にお問い合わせください!

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